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One gear one life, Live To Ride, Tōkyō ga shūse

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 『ドラゴンクエストII』の企画がスタートして凡そ7ヵ月後、当初の予定より少しは遅れたが、
11月初旬にゲームプログラムは一応の完成を見た。このまま商品化すれば、予定通り年内発売、
つまり12月下旬に発売可能である。だが、しかし!ご存じのように、ドラクエIIが発売されたのは今年の1月26日。
状況として年内発売が可能だったのに、何故結果的に1ヵ月も発売が伸びてしまったか?
 答えはカンタン。プログラム的には完成したけど、実際に遊んでみると非常に辛かったから。これが、1月
伸ばした理由である。つまりこの時点では、ゲームとしてのバランスがまだとれていなかったのだ。
 もっとわかりやすくいうと、自分のキャラクターの強さとモンスター側の強さのバランスが×だったというわけ。
勿論プレイヤーのレベル設定やモンスターの強さの設定データは、いいかげんに作製したのではない。
中村くんのほうから戦闘シミュレータをもらい、それでいちいち確かめながらプレイヤーのレベル設定や
モンスターデータを作製していったのだ。

 そこまでやってデータを作製したのに、実際にゲームとしてあがってきて遊んでみるとバランスが取れて
いなかった。それは何故か?理由は2つある。
 まず、シミュレータは1回毎の戦闘シミュレーションで、それで以て毎回緊張感のある戦いを、というような
データの作り方をしてしまったため、実際にゲームになり移勤しながら連続的に戦ってみると、非常にキツイ
ものであったこと。
 さらに同じモンスターでも、出現匹数により予想以上の結果の違いがあったこと。
 この2つである。このため、最初に出来てきたものはとても遊べたものではなかったのだ。とにかく、すぐ
死んでしまう。とても2人目の王子を見つけるまでいかない。さあ、どうするか?

 というわけで、商品化を1カ月遅らせてバランス取りが始まったのだった。とにかくプレイヤーがまだ仲間を
見つけず1人のとき、やたらと死ぬ。この問題を解決するため、ローレシア大陸では同時に出現する
モンスターの数を3匹までとした。そう変更した後、再び遊んでみると大夫良くなったが、まだキツイ。
というのも、1人めはファイター。いくらレペルが上がってもホイミの呪文を覚えないので、その都度薬草を
使ったり宿屋に泊まったりしなければならない。つまり、遠出すればするほど辛くなってくる。
 というわけで、サマルトリアのお城の位置を変更した。
 実をいうと、最初サマルトリア城は現在の湖の洞窟の位置にあったのだった。しかし、そこは宿屋のある
リリザの町からあまりに遠い。ここは仲間と2人になってから来るようにしよう。サマルトリア城をリリザの町に
グッと近づける(ドラゴンクエストIIのLPレコードが発売されていますが、なんとジャケットの裏に湖に囲まれて
いる城の写真が出ています。これが実は初期のサマルトリア城。ジャケットの撮影が比較的早めに行なわれた
ため、ジャケット写真は初期のバージョンのものになってしまったのでした。興味のあるキミはレコード屋さんで
見てみてください)。

 そんなわけでサマルトリア城をリリザの町に近づけたのはいいけど、それだけだと折角の湖が何も意味を
なさなくなってしまう。というか、こっち方面に来る必要がなくなってしまう。折角地形まで作ったのに、それは
あまりに勿体ない!
 というわけで、元サマルトリア城の位置には洞窟を置いたのだった。このことにより、モンスターの分布図の
再構成、さらに元のサマルトリア城の位置を洞窟にしたため、アイテムのある場所の再考などの問題が
起こってきたが、ゲームバランスを取るために再びそれらのデータを作りなおす。さらに試してみて、
モンスターデータやレベル設定、武器・防具の値段、効力を調整してゆく。

 言うまでもなくRPGはバランスが命である。そしてバランスをとるためには、実際にプレイしてみてデータを
少し変更して、またプレイしてさらに変更してゆく、という方法しかない。
 具体的にいうと、この時期からスタッフー同は勿論、アルバイトのゲームモニターの人達など、かなりの人数
が実際にプレイしてみるわけ。そして実際に遊んでみた感想、あるいは苦情などが、全てボクの元に届けられる。

 「なかなかお金が貯まりません。もっと物価を下げてください」「1回の戦闘に時間がかかります。もっと早め
に勝負かつかないでしょうか?」 「もっとレベルが上がるのが早くてもいいのでは?特に4から5あたりがキツイ
です」「いや、レベルの上がりかたは今くらいでいいけど、あまり死なないようにしてください」

 -などなど、各人各様の意見をいってくるのだった。そういった意見に耳を傾け、さらにボク自身プレイして
みる。そして、ここはマズかったという部分のデータを次々に変更してゆくわけ。それが出来上がると、
すぐさま変更後のデータをFAXでチュンソフトに送る。チュンソフトにいる中村くんたちは、ボクから新しい
データが届くとそのデータに差しかえて、新しい試作バージョンをつくりあげていく。そして、それを再び
みんなに配るわけ。
 もちろん、バランス取りは1回では終わらない。こういったことを何度も繰り返すのである。始めは4-5日周期
であったが、やがて2-3日周期となり、1日周期となってゆく。ここまでくると、試作バージョンには日付時間が
書きこまれるようになってくる。『12月8日午前4時バージョン』というふうにだ。そうしないことには、どれが1番
新しい変更後のバージョンかがわからなくなってしまうからだ。

 というように、プレイしてみては呪文を覚える順番を変更したり、モンスターの強さをかえたり、教会の値段を
下げたりと、1力月が瞬く間に過ぎ去っていた。もはやタイムリミットである。100%とは言えないけど、90%以上
は理想に近いバランスになってきたと思う。もっと時間をかければ100%に近づかせることができるだろうが、
これ以上子供達を待たせるわけにもいかない。

 12月中旬、ついに最終バージョンが完成する。と同時にボクは胃潰瘍でぶっ倒れたのだった。
いやーキツかったぜ。

 メモリ等の制約で、泣く泣くボツになった事柄について。
 まず残念だったのは、見せ場には紙芝居的に大きな絵を入れるという企画。当初の予定では入るはずで、
既に絵のデータもあがっていたのに、最終的にはやはりメモリに余裕がなくなり、ボツになってしまったのだ。
多分気付いている人は少ないと思うが、ドラクエIIの使用説明書の物語のところに、それらの絵のうちの1枚
だけがひっそりと写真になって載っている。勿論ファミコンの画面写真であり、本当はカラーだ。そして、
シナリオ的にも、そういった1枚絵を利用するはずだった。たとえば舟の財宝、当初の設定では、大塔台の
てっぺんからロンダルキアを一望すると、ロンダルキアの台地の絵が出て、さらにその向こうの海のーカ所が
キラキラと光っている。つまり舟の財宝はそこにあり、財宝に関してそういった情報を人々に話させるシナリオに
していた。が、大きな絵がカットされた時点でシナリオも変更してしまったのだった。
 しょーもないところでは、゛あぶないみずぎ″というアイデアもあった。こればミンクのコートに匹敵するもので
やたら値段が高くて、それを3人めの王女に買ってあげて着せると本当に画面上のキャラクタがあぶない水着
姿に変わるというもの。ただし、友だちからその話を聞いて「えへへ、オレも買ってあげよう」と嬉しがっても、
キャラクターの名前によっては、買ってあげても「イヤよ。こんなの着られないわよ!」と着てくれなかったりして…。
 さらにエンディングも、もっと色々やるはずであった。王位につき王座に座ると、色んな人々が1人また1人と
王座のもとにヒザまずいては祝辞をいって帰ってゆく。そして最後は艶やかな舞踊会が開かれる。
 またボツになったが、こんなアイデアもあった。それは、2番めの王子(サマルトリアの王子)が犠牲となって、
最後の敵を倒すというものである。目的は果たしたが、もはやサマルトリアの王子は戻らない。彼の冥福を
祈りながら、キミはムーンブルク王女と2人で帰路に…。お城では人々が待ちかまえ、キミたちの偉業を
心から称えてくれる。そして、一大セレモニーが開催される。
 と、その時!

 「お兄ちやんの仇っ!」 駆け寄ってくる1人の少女。気付くと、少女の持った短刀がキミの胸に深々と
刺さっていた。少女は、言うまでもなくサマルトリアの王子の妹であった。
 ボーゼンとする人々。キミの身体は、やがて、ゆっくりと倒れてゆく。
 と、この結末はあまりに悲しすぎるので結局やめてしまったのだった。でもなんとなく、こういった雰囲気も
捨てがたいので、いずれ機会があれば、ひたすら美しく悲しい涙、涙のRPGを創ってみたいと思う(実現する
のはいつのことになるか、わかんないけど…)。ゲームをしながら思わずボロボロと泣いてしまう。そんなゲーム
があったっていいだろう。

 と、話がそれた。-などなど、メモリの制約から無くなってしまったアイテムも少なくないのだ。所々にカラッポ
の宝箱があったりするのは、その名残りである。想像力豊かなキミはカラッポの宝箱を前に、「ここはなにが
入っていたんだろう」などあれこれ考えてみるのも楽しいかもしれない。

 ともあれ「ドラゴンクエストII」は発売され、既にボクたち製作者チームの手から離れていってしまった。
 ボクたちは世界を用意しただけである。その世界でどんな物語を体験するかは、キミ達の手にかかっている。
願わくばその物語が楽しい想い出になりますように。パルプンテっっ!!

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